身体のどの部位でも、傷は負いたくないですが、特に傷を負いたくない部位の一つが眼でしょう。
今回はそんな眼(眼球)に傷を負ってしまった場合についてです。
眼球に傷が!
眼球が傷ついた、という場合には幾つか要因が考えられると思いますので、まずはその要因について整理します。
- 機械的受傷(直接)
このタイプに当てはまるのが、何かが爆発して、その破片が眼に入った(刺さった)場合などです。
- 鈍的受傷
ボールが飛んできて、咄嗟に眼を瞑ることができたので、直接眼球がきずついたわけではないが、ボールがぶつかった衝撃によって、眼球内部に損傷が出た場合などがこれに当てはまります。
- 化学的受傷
洗剤などの化学物質が眼に入った場合がこれに当たります。
- 物理的受傷(非機械的)
レーザーや放射線などによる傷害がこれにあたる。
眼の構造
眼の外傷について後述しますが、その中で眼の各器官の名称が出てきますので、簡単に目の構造についても触れておきます。
たくさん書いてあるので、面倒くさい方は、この部分は読み飛ばして、後述の色んな眼の外傷についての文章を読む中で、知らない単語が出てきたときに、確認しに戻ってきて頂ければ幸いです。
下記動画もご参照下さい。
- 「結膜」:白眼の部分の表面の膜。
- 「角膜」:黒目の部分の表面の膜。
- 「瞳孔」:黒目の中心部にある小さな黒い丸。瞳孔という器官はなく、虹彩の無い部分を瞳孔と呼んでいる。
- 「虹彩(こうさい)」:黒目内、瞳孔の周りにある茶色い部分。外国人の場合、青色だったり鳶色だったり、色んな色の人間がいる。カメラで言う「しぼり」を担当する。暗い場所で瞳孔が大きくなるのは、虹彩が縮むためである。
- 「水晶体」:虹彩の後ろにある、「レンズ」に当たる部位。白内障で白く濁るのはこの水晶体で、白内障が進んだ場合この水晶体を取り除き、人造の水晶体を入れる。
- 「前房」:角膜と虹彩の間にある空間。「房水」という液体が詰まっている。房水は、角膜や虹彩などを構成する細胞に栄養分などを補給している(眼球には血管が通っていない器官も多く、涙や房水などを使ってそれらの器官に栄養分を補給している)
- 「硝子体(しょうしたい)」:眼球の中に詰まっているゼリー状の物質。眼球の形を形成している。
- 「網膜」:眼球内部の後ろにある、瞳孔から入ってきた光を感知する膜。
- 「脈絡膜」:毛細血管だらけの膜で、網膜などに栄養分を補給している。
- 「強膜」:眼球表面の膜のうち、角膜と結膜を除いた部分。つまり外からは見えない部分の表面膜。
様々な眼の外傷
眼の表面の傷
結膜・角膜共に、軽度の細かい傷であれば修復される可能性は充分あります。
但し、刺し傷など、「穿孔性外傷」と呼ばれるタイプの場合は、表面の膜だけでなく、内部の器官まで損傷しているため、即手術が必要ですので、救急車で病院へ行って下さい。
また、化学的外傷の場合には、放っておくと化学物質が周囲の組織を侵しながら内部へと浸潤していってしまう可能性がありますので、一刻も早く洗浄する必要があります。
洗浄は、理想的には「生理的食塩水」と呼ばれるものですが、緊急の場合には普通ありませんので、水道水でかまいません。
とりあえず流水で流してから病院を受診しましょう。
なお、角膜が傷ついてしまった場合、内部に溜まっている房水が流れ出てしまうことがあります。
この場合、眼圧が低下し、眼球がゆがんでしまい、焦点距離が変わり視力が低下してしまう可能性もあります。
レンズ部位周辺の傷
直接の外傷だけでなく、鈍的外傷による傷害も出やすい部位です。
例としては、外傷性白内障(水晶体がずれたり歪んだり濁ったりする)、前房出血(虹彩周辺の組織から出血した場合、房水が溜まっている前房に血が混じる)などがあります。
この場合、手術が必要になることが多いです。
また、「結膜下出血」の場合、見た目は白眼が真っ赤になり、非常に痛々しいですが、1週間ほどで黄色くなってきて、徐々に白眼に戻っていきます。
眼球の奥の傷
鈍的外傷が多い部位といえるでしょう。
ボクシングで有名な「網膜剥離」などがあります。
網膜を損傷した場合、視野が欠けるなど、後遺症が残りやすいため、要注意です。
また、「硝子体出血(眼球内部の出血により、硝子体に血が混じる)」の場合、軽度であれば経過観察により自然治癒することもあります。
重度の場合は当然手術となります。
強膜や脈絡膜は一番奥にあるため、ここが損傷した場合には通常、他の組織も損傷しています。
受診について
何かが刺さるなどして、眼球内部まで傷ついた場合には、どこが損傷したとか考える前に救急車を呼ぶと思います。
治療法も手術になるのはすぐ分かると思います。
問題は、ボールが当たるなどの鈍的外傷の場合です。
この場合、自分では受診すべきかどうか分からないときもあります(だんだん出血していって症状が出るのは数時間後、ということもある)。
迷ったら念のため、眼科を受診して下さい。
また、回復するのかどうかについては、損傷部位によります。
「血管の通っていない組織もある」と先述しましたが、そういった組織はほぼ再生しません。
その例が角膜で、故に角膜損傷がひどい場合は移植を施すことになります。
※厳密に言いますと、角膜も何層かに分かれており、涙と接している角膜上皮については一応再生されます(コンタクトレンズがごろごろ異物感あるときは角膜上皮が傷ついている場合が多い)。
市販の目薬
どうやら結膜に小さい傷がいったようだ・・・。
そんな場合に、市販の目薬を使いたくなるかもしれません。
しかし、目薬を打つと、当然、傷の部分にも薬品が染みるわけです。
むしろ健康な結膜部分より、傷の部分の方が薬の影響を受けやすいと言えます。
ところが、市販薬には、様々な成分が入っています。
よく言われるのが防腐剤ですが、それ以外にも多くの効果を得るために色んな薬品が混ざっています。
中には傷修復に関係のない成分もある可能性があります。
やはりここは面倒くさくても、眼科を受診し、専用の薬を出していただくことをオススメいたします。