ふと鎖骨のあたりに違和感があり触ってみると、なんだか腫れている・・・
しこりがある・・・
そんなときに考えられる病気はどんなものがあるでしょうか?
しこりの原因
最も多いのが、リンパ節の腫れです。
リンパ液は、免疫の役割を果たしており、リンパ管を移動します。
リンパ管系は、随所で血管系と繋がっており、その中継地点(接続箇所)となっているのがリンパ節です。
リンパ節の役割は、①リンパ管から血管へと細菌やウイルスが移動しないよう、チェックする、いわば空港の検疫所のような役割、②リンパ球を産生する役割、の二つあります。
この①の役割を果たす際、ときにリンパ節内で、「免疫vs抗原(ウイルスなど)」の戦いが激しくなることがあり、そういったときに、「炎症」という形でリンパ節が腫れるのです。
その他、しこりのようなものが感じられる原因としては、血管狭窄により血管が膨らんでいるとき(そんなに大きなしこりは体外から感知できることはそうそうありませんが)や、癌があるときなどです。
では、具体的な病名に沿って、みていきましょう。
リンパ節腫脹
上記のように、リンパ節に何らかの病原体が侵入し、炎症を起こしたものです。
腫れが大きいほど痛みを感じることが多いですが、逆に言えば腫れが小さければ痛みを感じないこともあります。
リンパ節腫脹と聞くと、すぐに癌を想起される方がおられますが、癌でない(良性)腫瘍であることも多いです。
一概には言えませんが、癌の場合、①しこりが良性の場合よりも固い、②しこりの大きさが徐々に大きくなってきている、といったような傾向があります。
癌
癌と言っても、肺がんから大腸がん、舌がんなど、多種多様ありますが、鎖骨のしこりで癌が疑われる場合、その周辺の組織(肺や舌、甲状腺、咽頭・喉頭など)に癌があり、そこから癌細胞が漂流してきて鎖骨リンパ節が癌化した、ということが考えられます。
特に女性で左側の鎖骨の上にしこりを感じる場合は、周辺の組織だけでなく、子宮や卵巣がんからの転移も考えられます。
癌(悪性)と、ただのリンパ節腫脹(良性)との見分け方は上述しましたが、素人には難しいというのも事実です。
不安に思った場合には、内科を受診しましょう。
頚性神経筋症候群(けいせいしんけいきんしょうこうぐん)
「首こり病」とも呼ばれています。
原因は、スマホやパソコンなどの操作のため、長時間うつむく姿勢をしていたり、事故などによりむち打ち症になったりしたことです。
特に昨今多いのが、長時間うつむく姿勢で、これにより首の後ろ側の筋肉に過負荷がかかり、そこから副交感神経異常が発し、頭痛や肩こり、めまい、不眠症などの症状が出ます。
いわゆる「ストレスに起因する」症状が多いため、誤診され、向精神薬などが処方されることもありますが、原因は「首の筋肉の異常」ですから、そこを治療しないと症状が治らないどころか悪化することもあります。
鎖骨にしこりができる、という症状はよく見られる症状ではありませんが、肩こりの一環として、鎖骨のあたりにしこりのようなものを感じる、ということがあります。
痛みと言うより違和感、といった方がいいでしょう。
結核
BCG(ツベルクリン)の普及により、昔に比べ結核患者は少なくなりましたが、依然として存在する病気です。
昔は「労咳(ろうがい)」などともいわれ、歴史好きな人は高杉晋作や沖田総司などを思い浮かべるかもしれませんが、若くして死ぬ恐ろしい病気です。
イメージとして、咳が主訴の肺炎に似た病気、と思われるかもしれませんが、咳の原因は、肺の中に腫瘍ができることです。
そして、その腫瘍は肺だけでなく、全身のあちこちのリンパ節にも起こりやすく、とくに鎖骨~頸部のリンパ節腫脹は好発です。
しこりは、押さえると痛みがある場合がありますが、必ずというわけではありません。
まとめ
一番不安なのが癌ですが、「痛みが無く、しこりが徐々に大きくなってきて、触ってみると弾力性が低く固い・・・」という場合には、有給をとってでも内科受診しておきましょう。
万が一癌だった場合、治療は早ければ早いほどよいです。
痛みの有無については、「腫れが大きいほど、周囲の組織を圧迫し、特に神経を圧迫した場合には痛みが出やすい」という傾向があります。
しかし、癌の転移の場合、痛みがないことも多いため、痛みの有無は「やばい」かどうかの目安にはなりません。
痛みに惑わされず、数日経っても引かない場合は一度受診するとよいでしょう。