腹痛というのは、何ともつらいものですが、下腹部の痛みなら、食中毒や胃腸風邪などで体験した方も多いと思います。
しかし、みぞおちに強い痛み、というのは経験したことのある人の方が少ないのではないでしょうか。
症状が特徴的な分、考えられる病気も絞られてきます。
今回はそんなみぞおちの強い痛みについて見ていきましょう。
食後の胃の痛み
みぞおちといえば、胃~食道にあたる部位ですが、食後にそのあたりが痛む、という場合には以下のような病気が考えられます。
胃潰瘍
毎回のように、食中~食後に痛みが現れます。
通常は、「強い痛み」を感じる前から、食中~食後に違和感や弱い痛みを感じる時期があります。
治療は、内科・消化器内科などで行われ、服薬による治療が多いです。
ひどくなると手術が必要な場合もあるので、早めに受診されるのがよいでしょう。
食中毒
食中毒の中には、強い胃痛を伴うものがあります。
食中毒の原因となるものを摂取した後に起きます。
ご存じのように、嘔吐や下痢などが続き、数日間苦しみます。
細菌性のものであれば、抗生物質により早く直すことができるため、出すものを出し切って少し落ち着いたときに受診するのがよいでしょう。
最も注意すべきなのは「脱水症状」です。
特に子どもはすぐに脱水症状を起こすため、スプーンに1杯ずつでもいいので、経口補水液(なければポカリスエットやアクエリアスなど)を摂取することが望ましいです。
がぶがぶ飲むと吐くことが多いので、少しずつ飲むのがポイントです。
胆石症
胆石というのは、簡単に言うと、「胆汁という消化液を作る『胆嚢』、或いは胆汁の通り道(=『胆道』)にできる石」のことです。
場所は肝臓、膵臓、十二指腸のある辺りです。
胆石症にも色んなタイプがありますが、このうち胆嚢結石では、「脂肪分の多い食事をとった後にみぞおち、あるいはみぞおちの右の方が痛む」ことが多いです。
受診は内科・消化器内科などをまず受診するのがよいでしょう。
治療は消化器外科による手術となることがありますが、従来のようなお腹をメスで切って・・・といった手術以外にも、腹腔鏡や結石破砕、内視鏡など色んな方法がありますので、まずは総合的に診断してくれる内科などを受診するのがよいでしょう。
胆石症について詳しくは、以下の動画もご覧下さい。
夜中の突然のみぞおちの痛み
虫垂炎
いわゆる盲腸です。
盲腸といえば右下腹部の痛み、というのは有名で、ご存じの方も多いと思います。
しかし、最初はみぞおちに痛みが出ることも多く、最終的に痛みが続くのが右下腹部、となります。
みぞおちの痛みの時点で虫垂炎と判断することは難しいですが、痛みが我慢できなくなってくる頃には右下腹部痛に代わっているでしょうし、医師がみればすぐに分かるでしょうから、痛みが我慢できないようなら救急車を呼んで下さい。
急性膵炎
アルコールを主因とし、上記で触れた胆石症から進行して起こることも多い病気です。
原因は、胆石が詰まって腫れることによって、近傍の膵液の通り道にまで影響を及ぼしてしまうためです。
症状はみぞおちのあたり、或いはみぞおちの左の辺りの痛みです。
痛みの度合いは、鈍痛から激痛まで様々あり、その他の症状として、発熱、嘔吐などがあります。
膵臓は沈黙の臓器、などとも呼ばれていますが、そのためか、症状の現れ方は本当に様々で、痛みも突然現れることもあれば徐々に現れることもあります。
医師でも診断は簡単ではありませんので、おかしいな、と感じたら、まずは内科・消化器内科などを受診しましょう。
特発性食道破裂
食後・・・というより、飲酒後になることが多い病気です。
飲酒後という特性のせいか、中年男性に多いです。
とはいえ、直接の原因は「吐き気による食道内圧の上昇」であり、吐き気をもよおす原因として多いのが「飲酒」というわけです。
ですから、胃腸風邪や食中毒などでも起きる可能性はあります(とはいえ確率は低いです)。
症状として特徴的なのが、「吐き気の後の、急なみぞおち(或いは胸)の激痛」です。
冷や汗が出て、意識がくらむような激痛ですから、おそらく誰でも救急車を呼ぶでしょう。
実際死亡の危険性のある病気ですから、迷わず救急車を呼んで下さい。
マロリー・ワイス症候群
特発性食道破裂と似たような病気ですが、頻度が高く、その代わりに緊急性は少し低い病気です。
症状は、「繰り返す嘔吐後の吐血」「みぞおちのあたりの痛み」などです。
痛みの度合いは傷の具合にもよりますが、上述した特発性食道破裂の痛みを5とすると、この病気の場合は3~4といったところでしょう。
原因は、繰り返す嘔吐により、胃~食道にかけて圧力がかかり、粘膜が裂けてしまうためです。
嘔吐の原因としてやはり飲酒が多いですが、3~5割程度、とされています。
特発性食道破裂に比べ、その他の要因(乗り物酔い、つわり、食中毒、胃腸風邪など)が多く、そのため小児でも起こることがあります。
治療としてベストなのは、胃の内視鏡ができる内科・消化器内科です。
その他のみぞおちの痛み
急性胃炎
よくあるのが、メンタルから来る痛みです。
強いストレスなどにより、キリキリとした胃痛が生じます。
ストレスの他、飲酒や生活習慣の乱れ、薬など様々な要因がありますが、原因は「胃が荒れている」ことにあります。
治療は、他の病気の可能性も考えると、内科、消化器内科がよいでしょう。
薬の内服により、数日で治ります(或いは、健康的な生活を取り戻すことによって数日で自然治癒します)。