軽微なものも含めると、誰しも一度はやけどを負ったことがあると思います。
そんなとき、皆さんはどうしているでしょうか?
「冷やす」。
誰しもそう考えます。
では、その後はどうすればいいのでしょうか・・・?
「やけど」とは?
「やけど」というのは、漢字で書くと「火傷」と書きます。
医学的には、「熱傷(ねっしょう)」と言います。
今回扱うのは、「人間の体温よりも高い温度により、皮膚などにダメージを負う熱傷」です。
日焼けも熱傷の一つ、とされますが、日焼けの原因は「高温」ではなく「紫外線」であるため、今回は触れません。
低温熱傷(ていおんねっしょう)
「低温やけど」といえば、聞いたことのある方も多いかもしれません。
通常の熱傷は、熱湯やバーベキューのときの炭、天ぷら油など、触れただけで痛みを感じるほどの高温により、皮膚及び皮下組織が損傷を受けます。
しかし、低温熱傷は「あたたかい」と感じる程度の熱に、長時間さらされることによって発症します。
多いのは、湯たんぽ、こたつ、電気毛布などです。
目安として挙げておくと、44度のモノに長時間触れていた場合、6~10時間程度で低温熱傷になる、と言われています。
低温熱傷の問題は、「自覚しにくい」点と、「気付いたときには深部まで損傷が及んでいることが多い」点です。
熱傷の分類
熱傷の重篤度は、その「広さ」と「深さ」にあります。
原因が炎であろうと、熱湯であろうと、こたつであろうと、治療及び重篤度は「広さ」と「深さ」に依存します。
熱傷深度
まずは、深さについてです。
浅い方から順に、「Ⅰ度熱傷」「Ⅱ度熱傷(浅達性)」「Ⅱ度熱傷(深達性)」「Ⅲ度熱傷」と呼ばれます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
- Ⅰ度熱傷
最もよくある熱傷で、皮膚の表面が数日間赤くなっている、という程度の症状です。
痛みも数日以内に治まります。
- Ⅱ度熱傷(浅達性)
Ⅰ度よりは深いですが、まだ損傷は表皮にとどまっています。
水ぶくれができます。
痛みは数日でマシになり、2週間ほどでなくなることが多いです。
- Ⅱ度熱傷(深達性)
損傷は表皮より奥、真皮にまで達します。
水ぶくれができ、浅達性との区別が難しい場合もあります。
痛みは麻痺してしまう場合が多く、やけどの痕は残りやすいです。
- Ⅲ度熱傷
真皮全層、若しくは更に奥の皮下組織にまで損傷が及びます。
水ぶくれを通り越して、ダメになった皮膚の部分が白かったり黒かったりします。
軽度のⅢ度熱傷の場合、Ⅱ度深達性と区別が難しい場合もありますが、重度の場合は素人目にも分かります。
痛みは麻痺し、やけどの痕はほぼ確実に残ります。
熱傷については以下の動画もご参照下さい。
https://www.youtube.com/watch?v=x_d6937qZ3A
熱傷面積
次に、広さについてです。
Ⅰ度熱傷なら問題ないのですが、Ⅱ度以上の熱傷になると、水ぶくれを始めとして、細胞外液が漏出します。
この漏出した細胞外液の量が多いと、ショックなどの症状が出る場合があります。
そのため、Ⅱ度以上の熱傷が、体表面積の20%(子どもの場合10%)を越えた場合には、入院治療が望ましいです。
体表面積の目安としては、「片腕=約10%」です。
熱傷の治療
まず、水ぶくれができるなど、Ⅱ度以上の熱傷の場合は、受診をオススメします。
その上で、軽度のやけどに対する家庭での治療法を、以下に紹介します。
※ 特に、低温熱傷の場合は、「本人の自覚症状」と「損傷の深度」が不一致な場合が多いので、念のため受診しておくことをオススメします。
まず始めに
とにかくやけどを負った場合にまず行わなければならないのが、「速やかに患部を冷やす」ことです。
重要なのは、「受傷後、どれだけ早く冷やせるか」です。
冷やすのは何でも構いません。
「水道水(流水)で10分冷却」が理想ですが、なければ「冷蔵庫にあるもの適当に出して冷やす」でもいいですし、野外で何もない環境なら「少しぬるくなっちゃったけど一応冷たいペットボトルのお茶」とかでも構いません。
まずは粗熱をとって、それから近くの公衆トイレなどの水道や、自販機で冷たい水やお茶を買って冷やしましょう。
応急処置後には、以下のような自己治療法があります。
ラップ治療法
家庭にあるもので湿潤治療をしよう、という考え方に基づく治療法です。
やり方は簡単。
ワセリン(医薬部外品の白色ワセリン)や、病院で頂いた軟膏などを塗った後、ラップを巻いて、テープなどで固定するだけです。
但し、水ぶくれが破れた痕には、ワセリンや市販の薬は塗らないようにしましょう。
疵痕が残ってしまう場合があります(もちろん、医師が大丈夫だと言ってくれた場合には塗ってもいいです)。
ラップを巻いた熱傷部位は、一日一回は取り替えましょう。
シャワーを浴びても構いません。
優しく、痛くないように、熱傷部位も綺麗にしておくとよいです。
熱傷部位の周囲の皮膚(汗腺)からは老廃物も出ていますので、そこを綺麗にするのが目的です。
標準的な湿潤治療法
ラップを用いた簡便な方法ではなく、「ハイドロコロイド素材」でできた被覆材(商品名としては「プラスモイスト」などがあります)を用いる方法です。
この場合、ワセリンは塗らずに、そのまま被覆材を熱傷部位に貼るだけで大丈夫です。
薬を使う方法
湿潤治療(ラップ療法)と併用することが可能です。
熱傷のときに用いる薬は、主に「抗菌剤」か「鎮痛消炎薬」です。
抗菌・殺菌作用のある市販薬の代表格が、「オロナインH軟膏」と「ゲンタシン軟膏」でしょう。
どちらを使われてもいいですが、基本的にⅠ度熱傷では赤くなっている程度ですので、毎日シャワーで優しく洗ってあげれば、抗菌剤の塗布は必要ないと思われます。
どちらも基剤にワセリンを使っているので、保湿効果により、傷口が早く・綺麗に治る効果やヒリヒリ感の減少効果が多少見込まれますが、普通に湿潤治療法をした方が効果的でしょう。
また、「鎮痛消炎薬」としては、やけどに対してはステロイドが使われることが多いです。
市販薬としては、「オイチミンD軟膏」などがあります。
これは弱いステロイドで、皮膚の赤みや痛みを抑える効果が見込まれます。
抗菌剤もついでに配合されていますので、「痛いのがいやだ」という方はこちらを使われるとよいでしょう。
Ⅰ度の熱傷なら、放っておいてもほとんど綺麗に治るほどなので構いませんが、Ⅱ度以上の熱傷については、医師でも数日経たないと「浅達性」か「深達性」か分からない場合があると言います。
やけどの痕が残るのが嫌な方は、「たかが水ぶくれ」でも、念のため受診することを、今一度オススメしておきます。